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首を傾げること
ある文章を読んで

                                7月1日(木)

 先日こんな文章を読んで、エーッと思った。
 いまどき、このような発想をしている方がいるんだと思った。実際は、権威主義的な教育界の中には、このような発想の人も少なくないのかもしれないが。

 それは、ある財団が毎年募集し、審査し、発表している理科教育賞作品集に書かれた、財団理事のY氏のまえがきである。

 まえがきの一番最初の節に
「当財団は、国の繁栄の基礎は科学技術にあるという考えに基づき寄付により50年前に設立された公益法人で、科学技術の振興に役立つ事業を行っております。」(下線は私が引く)

 国の繁栄のために科学技術はあるのであろうか?とんでもない発想であると私は考える。百歩譲って、この考えは、50年前に財団が発足した頃の「出発点での発想」にとどまっているのかも知れない。「国の繁栄の基礎は科学技術にある」と言っているのであって、科学技術は国の繁栄を目的としたものではない、というかもしれないが、この文章の真意は「国の繁栄のために科学技術はある」である。しかし、今もこの考えと似たような考え方が、教育界でも経済界でも政界でも、さまざまな所で語られているように思えるのだ。

 科学技術は、国の繁栄のためなんぞではなく、庶民の生活を豊かに(金銭的な豊かさや便利さではなく)するために、ものごと(自然も含めて)の本質を深めるためにあるのである。

 いわゆる「理科ぎらいが増えている」の論法にも私は組しない。
 理科の教育界でもこの論法がかなり浸透していて、文科省と一緒になって、科学予算の増額や理数科の授業時数の増加に使われた面がある。
 私はもちろん理科の授業時数増加は賛成なのだが、この「理科ぎらい」の論法での授業増加要求には異を唱えていた。
 「理科ぎらい」は本当に増えているのだろうか?そもそも、学びの領域に「好き」とか「嫌い」とかの感覚的な表現が相応しいのであろうか。「得意」か「苦手」なら理解出来る。「好き」とか「嫌い」とかは何を基準に判断するのであろうか。学習内容であろうか、指導内容であろうか、指導者自身に対してであろうか。
 私は、どんな生徒でも、新しいことを知り、自身の自然認識を深めることに喜びを感じるはずである。そう感じられないとしたら、学習すること自体に苦手意識をもっていたり、学校での学習という体制自体に嫌悪感を感じている、からなのではないだろうか。

 先に食料自給率の問題について書いたが、このような一面的な論法が、さまざまな論壇で語られ、そのことによって、善意であっても悪意であっても奇妙な結論を形成していることがある。

 消費税の増税問題についてもしかりである。
 実際は、主要政党では1党のみが「消費税増税反対」のはずなのに、なぜか大手マスコミは「2政党は賛成だが、他の野党は反対」と分類している。
「当面反対」と主張している政党が、なぜ消費税反対の党に組み入れられてしまうのだろうか。ひどい論法である。
 この消費税増税の理屈について語られる「消費税で増税しなければ国が破綻する」という論法もめちゃくちゃで、そもそも国とはなんなんだ、ということについても言いたいが、ここでは置いておこう。消費税増税の一方で、法人税を下げることが、景気対策として、どこでどう繋がるのであろうか?聞き飽きた「高齢化社会、福祉社会のために云々」の論法もよおく数字を見るとごまかしだらけである。
「普天間問題」についての論法も同じである。
 普天間基地の解決は「アメリカ軍は自国にお帰り下さい」というのが単純な結論である。「安全保障問題はそんな単純なものではない」というのかもしれないが、物事の本質というものは単純なものなのである。アメリカ軍が自分以外の国に派遣しているのは、その方がメリットが大きいからである。だれにとって?アメリカと日本の「国家機構」にとってである。アメリカと日本の庶民にとっては、そんなことはどうでもよいことなのだ。人殺しの組織集団は自分たちの近所から排除したいだけなのだ。軍隊というものは、歴史上、庶民に銃剣を向けるものだ。軍隊は警察ではないのである。

 国民の多くが、マスコミの多くが語る、ひどい、ミョウチクリンな、非科学的な論法に騙されてしまっているように見えるのは残念なことである。
 『国栄えて民滅ぶ』よりも『国滅びて民栄える』方が何百倍も良いことであると確信する。
 科学教育を「国家の繁栄」のためではなく、庶民の生活を豊かにするために推進していくこと。一歩一歩そのための実践を積み重ねていきたい。
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2010.07.01 Thu l その他 l COM(0) TB(0) l top ▲

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